パトリックの威厳が護衛に放たれ、辺りの空気をピリピリとしたものに変えていく。
護衛の眉がヒクッと動き、体が一歩後退った。
「この私がついている。何かあれば命を投げ出す覚悟だ。兵士長官として命じる。護衛は暫く離れていろ。心配するな、長い時間じゃない。すぐに返すよ」
護衛は頭を下げてスッと後退って遠ざかり、離れたところから鋭い瞳を向け、周囲を警戒していた。
―――全く、任務に忠実な男だ。私にも怯まないとは、流石に3階の兵だな。
「エミリー、庭を散策しよう」
パトリックはエミリーの手を腕に誘導して、しなやかな身体をスッと引き寄せると、ゆっくり歩き始めた。
「あれから庭も随分整えられて、綺麗に仕上がったんだ。月祭りに間に合うように、モルトたちが頑張ってくれてね」
パトリックは馬車止まりを通り抜けて、王の塔側の庭に歩いていく。
こっちの庭はエミリーにとっては初めてで、なんだか心が踊り出すようなワクワクとした気分になる。
加えてパトリックの紳士的なエスコートもあって、久しぶりに楽しい気分を味わっていた。
「月祭り、ですか?」
「あぁ、もうすぐ聖なる月の日だ。毎年城に神官を呼んで月を祀る。聖なる月の日は月の魔力が高まると言われていてね。祭りは国の守りを強めるために行うんだが、一般的には恋人たちがその夜に永遠の愛を誓いあったり、想う人に愛を告げたりするんだ」
「素敵な日ですね。とてもロマンチックだわ。パトリックさんなら、何度も愛を告げられたんじゃないですか?」
エミリーは微笑みながらパトリックを見上げた。
こんなに優しくて素敵な方なんだもの、かなり大人な方だし、そんなことは掃いて捨てるほどあるはず。
庭には、植えたばかりの色とりどりの花が瑞々しく花を咲かせ、日の光を浴びていっそう輝いていた。
「そんなことはないさ。その日はいつも城に詰めているからね。私は今まで愛を告げたことも、告げられたこともない」
「そう・・なんですか?でも、それ以外の日には、何度も愛を告げられてるのでしょう?」
脇の花壇には蝶がひらひらと訪れ、エミリーの前を何匹もかすめて飛んでいった。
「まぁ、少しはね・・・。だが、告げたことは一度たりともない。この年になるまで愛する人に巡り合えないまま、ずっと独り身だ」
パトリックは少し寂しげに微笑んだ。
暫く歩いていると、小さな噴水のある広場に出た。
「だが、漸く愛するべき人に巡り合うことが出来た。今年、初めて月祭りの夜に愛を告げようと思っている」
護衛の眉がヒクッと動き、体が一歩後退った。
「この私がついている。何かあれば命を投げ出す覚悟だ。兵士長官として命じる。護衛は暫く離れていろ。心配するな、長い時間じゃない。すぐに返すよ」
護衛は頭を下げてスッと後退って遠ざかり、離れたところから鋭い瞳を向け、周囲を警戒していた。
―――全く、任務に忠実な男だ。私にも怯まないとは、流石に3階の兵だな。
「エミリー、庭を散策しよう」
パトリックはエミリーの手を腕に誘導して、しなやかな身体をスッと引き寄せると、ゆっくり歩き始めた。
「あれから庭も随分整えられて、綺麗に仕上がったんだ。月祭りに間に合うように、モルトたちが頑張ってくれてね」
パトリックは馬車止まりを通り抜けて、王の塔側の庭に歩いていく。
こっちの庭はエミリーにとっては初めてで、なんだか心が踊り出すようなワクワクとした気分になる。
加えてパトリックの紳士的なエスコートもあって、久しぶりに楽しい気分を味わっていた。
「月祭り、ですか?」
「あぁ、もうすぐ聖なる月の日だ。毎年城に神官を呼んで月を祀る。聖なる月の日は月の魔力が高まると言われていてね。祭りは国の守りを強めるために行うんだが、一般的には恋人たちがその夜に永遠の愛を誓いあったり、想う人に愛を告げたりするんだ」
「素敵な日ですね。とてもロマンチックだわ。パトリックさんなら、何度も愛を告げられたんじゃないですか?」
エミリーは微笑みながらパトリックを見上げた。
こんなに優しくて素敵な方なんだもの、かなり大人な方だし、そんなことは掃いて捨てるほどあるはず。
庭には、植えたばかりの色とりどりの花が瑞々しく花を咲かせ、日の光を浴びていっそう輝いていた。
「そんなことはないさ。その日はいつも城に詰めているからね。私は今まで愛を告げたことも、告げられたこともない」
「そう・・なんですか?でも、それ以外の日には、何度も愛を告げられてるのでしょう?」
脇の花壇には蝶がひらひらと訪れ、エミリーの前を何匹もかすめて飛んでいった。
「まぁ、少しはね・・・。だが、告げたことは一度たりともない。この年になるまで愛する人に巡り合えないまま、ずっと独り身だ」
パトリックは少し寂しげに微笑んだ。
暫く歩いていると、小さな噴水のある広場に出た。
「だが、漸く愛するべき人に巡り合うことが出来た。今年、初めて月祭りの夜に愛を告げようと思っている」


