慶志朗は、窓辺の椅子に腰かけて、 読みかけの本を開いた。 「お屋敷に帰られて、 再びお嬢さまにお会いする日が 楽しみでございますね」 詩乃は、本を読み始めた慶志朗の邪魔をしないように 静かに部屋を出た。 慶志朗は、祐雫が座っていたテラスの椅子に祐雫の残像を感じながら、 満ち足りた気分で本の活字を追った。