「詩乃さんが気に入ったのに 残念ですが、明日帰るそうです」 慶志朗は、これ以上詩乃から乗せられないように 無表情で答えた。 「まぁ、さようでございますか。 坊ちゃま、残念でございますね」 詩乃は、「残念」を強調して発音する。 「また森が静かになるだけのことです。 それから、詩乃さん、 用事を思い出したので、 ぼくも明後日には屋敷に帰ります」