サイメリヤ王国騎士団の本拠地である「ナイトキャッスル」。

その一階長廊下を、
レイラード・アメリアは前を見ながら歩いていた。


歩いていると前方より中年の騎士がやってきたので、
アメリアは立ち止まって会釈をする。

中年の騎士は会釈を返すが、
しかめっつらと言える程にその表情は固い。

アメリアは気にすることなく、
さっさとその場を離れた。

会釈を返してくれるのはまだ良い方で、
あからさまに無視をしたり、
侮辱するように笑ったりする騎士もいる。

そんな輩に毎回カリカリしていては身が持たない。

これ以上角が立たない程度の付き合いがベストだろう。

無論すべての騎士がこういった輩というわけではないが、
殆どは下らない男性優位の意識にとらわれていた。

本当に下らない。

アメリアは廊下の突き当たりで、
二階に上るために階段へ足をかける。

「アメリア!」

若い男の声で名前を呼ばれた。

声のした方へ顔を向けると、
天然パーマのかかった緑髪の騎士が走って来ている。

「ロウ!
久しぶりだな!」

アメリアは手を挙げて、
ロウを歓待する。

ロウは従騎士時代の友人で、
半年程前に別れて以来、
会うことがめっきり少なくなってしまった。

癖の強い髪も、
大きな体も前と変化が無い。

ロウはアメリアに追いつくと、
これまた変わらない笑顔を見せた。