記憶混濁*甘い痛み*


数日後。




友梨は6時の夕食を早々に済まし、眠る前の習慣になっている読書をする為に、本を選びに図書室へと向かっていた。


終末医療も扱うホスピスの為か、アメリカというお国柄なのか、聖書や、友梨が日本でも愛読していたサンパウロの宣教本が図書室には揃っている。


発行年数の早いものから読み進めてゆくのが、最近の友梨の幸せだった。


……扉を開けると、ここ数日見かけなかった、条野さん……和音の姿があった。


机に肘をついて、片手で綺麗な顔を隠している。


最初友梨は泣いているのかと思いギョッとしたものの…よく見ると和音が動く気配はなく。


どうやら、疲れて眠ってしまっているようだった。


「……」


起こさないようにそぅっと、出来るだけ遠くを通って(と、言っても大して広くはない部屋の為、せいぜい5メートル程度)目的の棚へ。




"信頼への旅"を返して、確か次は、マザーテレサさまと、ブラザーロジェさまの"祈り"だった筈。




友梨はそう思って探すものの  


「……?」


3日前に見た時にはあったのに、今日に限って見当たらない。


誰かに借りられてしまったらしい。