記憶混濁*甘い痛み*


和音が高校時代、生徒会に所属していた事もあり、未だに交流が深い役員OB達は、決して騒いだりはしないものの2人を襲った悲劇を悲しみ、憎んでいた。


「どうしてあげる事も出来ないな。友梨の言葉を、届けることさえ、今の和音には……」


呟く忍。


自分達だって、あの2人に幸せになってほしいと思う。


和音が友梨を、友梨が和音を見つめる甘い視線に、想いに憧れ、癒された。


けれど、もう 今、この状態になってしまった以上、何もなかったように元の2人には戻れない。


それは友梨の性格上、間違いなく。


なのに友梨は、それでも和音の心を捉えて離さない。


「友梨はさ……和音と結婚すべきじゃなかったのかもな。彼女の愛するキリストの教えにそって、周りの人の為に愛を分け与えるシスターになった方が良かったんじゃないか?」


めずらしく真面目な顔で、ルイジ。


シーナは黙って唇を噛んでいる。


友梨に恋をしていた芹沢も、彼女を可愛がっていた美弥子も、うまい言葉が見つからないままに俯いている。


普段は5人も集まれば狭く感じる八畳の芹沢の部屋が、えらく広く感じられた。