「……あなたは、酷い女です。深山咲さん」


切な気に、小さく呟く和音。


そんな和音の態度を見て、友梨は俯いたままに。


「ええ…ええ…!どうか私を軽蔑なさって…私は既婚者でありながら…あなたを誘惑しようとした…」


「……」


「イエスさまの12使徒から裏切り者と罵られても仕方がない…マグダラのマリアを洗礼名に持つ、蛇のような女です。お兄様がいるのに、その『女』の支配に私は操られた!貴方の愛された、私に似た女性とは違う…汚れた女なんです…!」


無意識にロザリオの石を指で数えながら、友梨は泣きながら許しを請うている。


けれど和音は、友梨の手を取り顔を上げさせると。


「……オレの意志は、どこにもないんですね……?貴女が気にするのは、オニイサマの事ばかりだ」


と、言って、友梨の肩に両手をかける。


「…条野…さん?」


「あなたが…すきだ」


和音は迷いながらも、唇に言葉をのせた。


「条野さん…?何を…血迷ってらっしゃるの?イヤです!」


フルフルと首を振って、和音の告白を受け入れられない友梨。


このひとが好きなのは…私とは別の『ゆうり』さん。


今はいないその女性の影を、私に重ねているだけ。