『和音先輩に逢って、私……弱くなったし、欲張りになった……』
高2のクリスマスイブでは、そう言って静かに涙を零していた。
『高校を卒業したらお兄様と結婚して、おうちと、イエスさまの為だけに生きようって……そう、誓って、それだけで良かったのに。なのに……あなたに逢って、恋して、見つめられて……』
「……先に見つめてきたのは、友梨だったけどな」
『今では、あなたに、優しくしてほしい。あなたに、側にいてほしい。あなたが……ほしいの』
「『アナタガホシイ』なんてどんな殺し文句だよ。男子校生誤解させんなって……」
和音は苦笑の後に大きく溜息をつくと、ロザリオを左手で握りしめて。
「返せよ……」
と、言って、瞳を伏せた。


