記憶混濁*甘い痛み*


…………幸せな 夢を見ていた。




友梨とオレと…産まれてくる筈だった子供がいた。

『友梨さえいればいい』

そう言い切ったオレに与えられたのが…友梨を奪い去られる、罰なのか?


楽しみに……していなかった訳じゃない。

だれかの命で救えるなら、オレの命を差し出した。


けれど選択肢が妻と子の2つだった時に、妻の命を優先した。




------ただ、それだけの事だ。




友梨に優しく抱きしめられたような気がして目を開けるも、そんな筈はなく。


誰もいない図書室に自分が1人。


「夢と現実の区別もつかなくなったか。そろそろヤバイのかな……オレ」


和音は、顔を隠していた手で、そのまま髪をかきあげる。


すると、サラっと肩から、何かがずり落ちた。


コートなんてかけてたかな…まだぼんやりしたままの頭で、手だけ伸ばして椅子の背にかかったソレを掴むと  


「……友梨」