「……隠れた。まだオレは気を許せない他人だな」


窓際から姿を消した友梨を見て、あえて明るい様子で和音。


狩谷は何ともやるせない顔で


「3ヶ月…難しいかもしれませんね」


と、呟いた。


「彼女の過去の症例を見ても、今回の記憶障害はなくした期間が長すぎる。今のまま半年、一年過ぎれば……彼女はあなたの知る女性ではなくなってしまうかもしれない」


「…そうですね」


「彼女の精神的な安定を望むなら、わざわざ辛い記憶を呼び起こすコトはないのかもしれません。あなたがそれでも、彼女を愛せるなら」


「オレが彼女を愛せてもダメなんですよ。彼女がオレでなく、別の男を望んでいるから」


「法律上はあなたの妻でしょう?」


「彼女の中では、芳情院さんの妻に塗り替えられている」


「僕の妻がそうなったら、僕は正気でいる自信がありませんね」


軽く眉を下げて苦笑い。和音と大して年齢が変わらない狩谷は、小さくため息。