「大丈夫です。どうぞ中へ」 蛍詩は二人を居間へ案内した。 「うむ。誰を前にしてもその落ち着き」 「はい?」 「流石だな」 二人に麦茶を出している蛍詩の顔をまじまじと見る原田大佐。 「…それは遠回しに老けてるって言ってますよね?」 蛍詩は乗り出していた体を改めて、机越しに正座をした。 「いやいや、そういうことでは…」 白い手袋をした両手を顔の前で振り、原田大佐は苦笑する。 暫しの間誰が喋る訳でもなく、縁側から聞こえる風鈴の音と懸命になくセミの声のみが居間を包んだ。