「出会ったころから菜々美は郁人の婚約者だった。

だから、付き合うとか、ってありえなかったけど、

郁人と菜々美の間はいつも壁があって

、郁人の見せない顔を菜々美は俺に向けてくれただろ。

だから、それでいいと思ってたんだ。

菜々美にとって郁人より俺の方が居心地がいいんだと思うことで、

自分を納得させてたから。

でも、今の菜々美は違うよね、

いつの間にか郁人との間の壁なくなってたんだな。

この間の菜々美の言葉聞いて、もう、俺は必要ないなって思ったよ。」


「春日、なんで、そんなこと。」

私は、ショックと驚きで膝がガクガクして、

とても立ってられなくて、床に膝をついた。


「ごめん、菜々美最後にするから聞いてくれ、

菜々美、俺は、菜々美がずっと好きだった。

いつだって、独り占めしたいと思っていたんだ。

でも、卒業するよ。郁人と幸せになれよ。」


私は、春日にも甘えていたんだと悟った。

人の気持ちを振りまわして幸せになろうとする私。

高校生の頃の私を思いだした。

結局私は成長していないんだと今になって気付かされた。


「聞いてもらえてスッキリしたよ。逆にお前モヤとさせたな悪い、

も、帰ろうぜ送るよ。」


はっとして、

「あ、デ-タ取らなかった、10分過ぎちゃった。

 はじめから、やり直しだよね?」