つないだ小指


「で、何?俺室長として?春日として?どっちだ聞けばいいの?」


「う~ん、春日に話す方が話しやすいけど。室長でお願いします。」


「了解、どうぞ。」


「私、このたび、専務の結城郁人と正式に婚約いたしました。

 今後ご迷惑を掛けることもあるとは思いますが、

 誠心誠意仕事に当たる所存ですよろしくご協力お願いいたします。」


一気に言った。私ちゃんとできてるよね。


「分かりました。では、研究室の人たちには報告してもいいのかな。」


「いえ、婚約式が決まるまでは、今のままでおねがいします。」


「なあ、今朝のってこのことなのか。?」


「うん、まあそれもある。

 郁人が大好き。一緒に居たい。

 それは、確かなの。


 でもね、不安なんだ、

 こうやって自分が分からないうちに物事が運んで行くのが、

 郁人が特別な人なんだから、しょうがないけど。

 皆に気を使われて、私が嫌な思いしないように考えてくれてて、

 私は何もしなくても、心配しなくてもいいって言われたら、

 私は何なのかなんて、不安だなんて思っちゃって。」


「まだ、間に合うぜ、やめにしろよ婚約なんか。」


「何言ってるのよ、やめないわよ。」


「じゃあ、迷うな。」


「分かってる。分かってるんだってば。」


「お前、一生のことだぞ後悔するなよ。」


「しないわよ。郁人といられるならなにも怖くない。


 きっといま離れてるから不安なのよ。」