つないだ小指

緊張しながら、会長室の前に立っていた。

「佐伯菜々美です。お呼びでしょうか」

「入りなさい。」

「失礼します。」

入るなりドキッとした。

重役がズラッとならんで歓談しているところだった。

「佐伯さんこっち。」

大人の顔の郁人が軽く手をあげて私を呼ぶ。

重役たちの前にに立たされる。郁人は私の横に来て肩をつかんだ。

どういうこと。なにが起こったの。

シンと静まった部屋に会長の声が響く

「このたび私の婚約者であった亡き佐伯香菜子の娘、

佐伯菜々美が4月より入社した。

それに伴い息子郁人との婚約を正式に整った事を報告する。

二人とも若輩者であるから、支援と鞭撻をねがいたい。

また、佐伯はまだ、入社間もないため、

このことは婚約式までは公的な発表は控えるつもりなので、

下の者への伝達は不要であることを了解してくれ。

以上。

今日の会議はご苦労だった。」

これが結城パパが言ってたことだ、と理解した。