つないだ小指

「菜々美ちゃん郁人のこと済まなかったね。

 前からあそこに新事業出すことになっていて、

 郁人に実績つくらせないと役員たちが納得しないから、

 どうしても責任者をやらせたいんだよ。

 2年したら社長に据えたいと思ってる。

 それまでは、あいつにできるだけ場数踏ませたい。

 苦労かけるけど待っていてやってくれるかな?」


「私に気を使わないでください。

 何年の付き合いだと思ってるんですか23年ですよ。

 こんな位じゃぐらつきませんよ。」


「心強いよ菜々美ちゃん。いっそ、嫁さんに欲しい位だよ。」


「ママたちに化けて出られるよ。」


「それいいな。会えるなら、化けてもいいから来てほしいよ。」


いつも、自信に満ちた結城パパの背中が少し小さく見えた。


「あ、そうだ婚約の話郁人から聞いてるよ。

 公にしないでくれって頼んだんだって?郁人がぼやいてたぞ。

 悪い虫が付きそうで心配だって。」


「わたしって信用ないんですね。」


「役員だけには伝えてもいいかい?いろいろ面倒なことが起こる前に。」


「面倒なことって?」


パパは曖昧に笑った。


実はすでにその面倒なことは起こっていたのだ。