つないだ小指


あの夜、郁人が私との婚約を急かせて、

指輪に拘ったわけは、

この後なぜなのかすぐ理解できた。


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卒業式を待たず、入社式が行われた。

卒業式は申請してその日に公休が与えられる。

今日から3日間清里の保養所で新入社員研修が行われる。

といっても新入社員の歓迎会のようなもので会社の重役の顔を覚えるためと新入

社員同士の親睦を深めるため、いくつか講和を聞いて毎日宴会。

はあ、疲れた愛菜に会いたいな。



「佐伯さん、ため息で幸せが逃げてくって話知ってる?」


「あ、え-と高山さん、ごめんなさいため息大きかったですね。」


「覚えててくれたんだ、いや、話しかけたくてね。

 そんな大きくなかったよ。
 
 聞いていい?それ婚約指輪なの?」


!忘れてた目立つよなあこれ、郁人に指輪だけ外さない約束してたんだ。どうし

ようかなあ。


「こ、これはね母の形見なの。母がデザイナ-でね。」

ちょっと苦しいかなあ。でも嘘じゃない。


「もしかして2年前に亡くなった佐伯香奈子さん?

 君、香奈子さんの娘さんだったの?あ、面影あるかも。」


「え、なんで母を知ってるの。」