春日は、私を残し東京へ帰って行った。


「郁人、私郁人を信じ切れなかった。ごめん。」


「いきなり春日と玄関に立っていたときは焦ったよ。」


「春日が、郁人は絶対嘘を言えないはずだから、

 会ってちゃんと話をしろって。」


「春日に感謝だな。」


「うん。」

郁人は、眩しそうな目で私を見つめ、


「会えてよかった。」


「わたしも。」


「間に合ったね。」

「え、何が?」


「来週は婚約式だ。」


「あっ!」


「忘れてたの?」


「う、忘れてました。」


「ひどいなあ、俺は、その為にすごく頑張ってたんだけど。」


「私は、郁人をどうやって手放そうとばかり考えてた。」


「電話してくれればよかったのに。俺が嘘言えないの知ってるでしょ。」


「だから、それが最後になりそうで怖いんじゃない。」


「嘘ついてもいいの?」


「、、、嫌だけど、嘘が欲しい時もあるかな。」


「無理、お前に嘘なんて絶対つけない。だから信じてよ。

 
 菜々美だけだから、生まれてから、今まで俺の心は菜々美だけ。」