「あの、すみません。」


電話を切ってあわてて香住さんに声を掛ける。

香住さんが、不思議な顔して私を見る。

「どうしても、物件を見たい人がいるので、その人も連れて来ていいですか?」

香住さんは、にっこり笑って

「もちろんです。」

と明るく返事をしてくれ、

「恋人ですか?」

と聞かれたので、

「まあそんなものです。」と曖昧に答えた。

::::::::::::::::::::::

会社の前に見慣れた男が二人立ち話をしている。

郁人と春日だ

走ってくる私に気がついたのか、

「菜々美!」

と呼び右手を挙げる

「どうしたのよ二人とも。」

息があがって、はあはあさせて両手で膝を押しながら腰を曲げた。

「菜々美の部屋、決める大事な場面に俺がいないなんてありえないだろ。」

「郁人は過保護だから。」

と、春日はケタケタ笑い、

「俺は、野次馬。おもしろそうだから。

それに今回の発端は俺だし。」

そういいながらニヤッとした。

二人も連れて行ったら香住さんは驚くだろうなと思いながら、

再び、さっきのワンル-ムマンションに向かった。