―今更何をっ!

もう、遅いんだよ。
私は元には戻れない。

あの時の幸せは、2度と訪れない……。―




立ち尽くしたまま、手に力を込めた。


そして、優梨の目からは大粒の涙が溢れていた。


これが、自分の意志が強い優梨が、初めて流す涙だった。


様々な想いを抱き、声も出さずに涙を流した。




優梨の部屋から大広間へ行く廊下とは反対の廊下の角には、人が立っていた。


その人の目からも、涙が溢れていた。



それは偶然、優梨と健二の話しを聞いてしまった、菜々だった。