「人の顔見てないで、早く行った行った。」





僕は、挨拶をして家を出た。やっぱり、僕たち二人には、このアパートは広すぎると思う。ルミさんは、なんも違和感が無いようだ。





僕は、いつもの通学路を歩いていると、誰かが後ろから走ってくる音が、聞こえた。誰だかは、なんとなくわかる。





「佐藤!おっはよう。」





松本だった。走ってきたせいか、息が上がっていて、鼻が赤かった。多分、こいつのことだから、寝坊でもして急いで来たのだろう。




「おいおい、佐藤。お前、袋とか持ってきてないのか?」





なんだ?松本も、ルミさんみたいなこと言うな……でも、そういう松本の手には、手提げかばんや、袋とかは一切無かった。手は、ポケットに突っ込んであった。





「袋って、持ってかなきゃいけないんですかね?」





「うーん、別に佐藤がいいなら、いいんだけど、お前きっと沢山貰うぜ?帰り大変だと思うけどな……」





ルミさんも松本も、何か勘違いしてるようだ。僕に、誰かがチョコレートを渡すなんて、有り得ないことなのに……





「そういう、松本も持ってないじゃないですか?」