「お返し……?」
お返しって言ったら、あの今から一ヶ月後にある、ホワイトデーってやつで、男子がチョコをくれた女子に、チョコでお返しをする、あれか。
「今日貰った子、全員にあげないと、不平等だし、あげた子と、あげない子に、わけるとあげた子の方が、また勘違いするぞ。まあ、俺は毎年___」
「松本!」
松本が、僕に説明していたのだが、その説明が、誰かによって遮られた。よく見たら、松本の後ろに、女の子がいる。松本の背がでかかったせいか、女の子は見えなかった。
その女の子の手には、可愛くラッピングしてある、箱があった。チョコレートだというのは、一発でわかる。
「はい、これ。受け取ってよ。」
そう言って、女の子は松本に無理やりチョコレートを、押し付け握らせたあと、どこかに行ってしまった。そう、顔は下を向いていたから、誰だったか確認できないほどに、その出来事は、あっという間だった。
二人の間に、沈黙が流れる。さっきまで、何を話していたかなんて覚えていない。とりあえず、今ここには、あからさまにチョコレートだってわかる、ラッピングをした箱を持った男子が、二人ポカーンとたっている。それだけだった。



