もう春だとはいえ、夜になると肌寒い。

体育館の外に出ると、紺色に染まる空と淡く光るきれいな三日月。





シャコシャコシャコシャコ





ちょこのいない帰り道。
異常に軽いペダルに
妙に肌寒い、俺の背中。





『見て、逸都!!
きれいな三日月。なんだかバナナみたいで美味しそうだね。』






アイツはホントにバカで食い意地が張ってるから。
いつかの帰り道で、三日月を指差しながらそんなノーテンキなコトをほざいたコトがある。




『アホか。バナナはもっと真っ直ぐだろうが!!しかも尖りすぎだ!!』



俺がすかさず突っ込むとアイツは



『そんなことないもん!!あぁいうバナナ、絶対あるもん!!』



ホッペをフグみたいにパンパンにして膨れてたっけ。






「ホント…アイツはバカなんだよな~。」






小さい頃からいつも一緒で
兄妹みたいで
家族みたいに育った、チョコ。



ポヤンとしてて、のんびりしてて、バカみたいに素直なチョコ。



アイツは頼りないヤツだから、アニキとして俺がちゃんとアイツを守ってやんなきゃ!!




って……
ずっとそう思ってた。