それからしばらくして救急車がやって来た。


陸翔は担架に乗せられ、救急車に乗せられる。

私も一緒に乗り込む。


夏の暑いスクランブル交差点に救急車の音が鳴り響く。



「こちらの男性の名前は?」

救急隊員の人に話しかけられる。


「坂、井…り、くと」

何年かぶりに出した私の声は、震えるだけでなく掠れていた。


声を出すことが当たり前じゃなかった毎日。

そんな時、急に戻った私の声。
声を出すことに慣れてなくて、すぐに喉が痛くなった。


酸素マスクをしている陸翔。
そんな陸翔は先ほどと打って変わって荒々しく呼吸を繰り返している。

救急隊員の人は2人いて、1人は必死に陸翔の世話を、もう1人は何かを書き綴っていた。

「坂井さんの年齢は?それから、事故の詳細を…」

1人の救急隊員の人が尋ねてきた。


「年は16歳で、事故の詳細は………」



私は、そこで話すのを止めた。