私が、久しぶりに声を出したのは悲惨にもこんな時だった。



「陸翔!陸翔!」

陸翔に駆け寄り、必死に陸翔の身体を揺する。


「……………」

だけど、陸翔は何も応えない。


陸翔……!!陸翔!

信じられない。
今、目の前で起きてることは現実…?


頭から血を流して、道路に横たわってるのは、本当に陸翔……?



私の大事な、大切な陸翔を道路へ突き飛ばしたのは誰?


チラリと辺りを見回す。

そこにはやっぱり夏美がいて………


夏美、どうして……?
突き飛ばすなら、私にしてよ……


どうして夏美は、私の大切な人ばかりを傷つけるの……?


それは、人間がやることなの………?

夏美には、“心”があるの……?


私は今、何も出来ない。
夏美をにらむことしか、力無く陸翔を呼び、揺することしか出来ない。


久しぶりに出た私の声は、こんな声だったのかと思い知らせた。



そして、嬉しいはずなのに、嬉しいと思わせてくれない……