美和side


「美和…」


突然、陸翔が話し出した。

「…?」
“なに…?”と言う意味を込めて首を傾げた。

「今更……今更、なんだけどさ…」


真剣な顔をして、うつむく陸翔。



「…忘れなくて、いい……」




私をしっかりと見つめて、陸翔がそう呟いた。


“忘れなくていい”……??

どういう、ことなの………??
ワケが、分からないよ陸翔。


夕暮れの砂浜に、波の音だけが静かに響く。


「ちょっと来て……」

そう言って陸翔は私の手を引き、海辺に向かうと、そこに座った。

私もそれにならって、陸翔の隣に腰掛けた。


波の押し寄せるギリギリの場所。
地平線の彼方に、沈みかけた夕日がきれいに見える。




私と陸翔の距離はわずか15センチ程度。
近くて、触れ合いそうな肩に、指先に、力が入ってならない。


緊張しすぎて、頭パンパン。