その日の夜に、携帯に電話がかかってきた。母からだった。 「何? 明日も早いから、寝たいんだけど」 今月の母の声は、私にとってあまりありがたくない。 いつも気まずい余韻しか残さないから、私はわざと不機嫌そうに言った。 『今度の日曜日、予定はあるのかい』 「? 別に、ないけど、何なの?」 『お見合いが、決まったんだよ。今度の日曜、十一時から、駅前のホテルで』 一瞬、頭の中がからっぽになった。