「とおる――」 何も変わっていなかった。 透は最後の時から何も変わらずに、優しい笑みを浮かべて私から少し離れたところに立っていた。 別れたあの日と同じ、濃いグレイのシャツを着て、前髪をのばしかけたまま。 そういえば、髪を切りにいくと、最後の日話していたのだ。 「とおる」 何も変わらない、あの日のままの透。 「とおる」 私はただ透を呼んだ。 「とおる、とおる、とおる、とおる――」