碓河はそんな桃の後ろ姿を黙って見送っていた。 「…………」 そして、その場に一人佇みおもむろに右手を眺めた。 桃に取り憑いた、死鬼の呪縛を解いた時のことが思い出される。 「…伝説の桃太郎、か…」 碓河は、幼い頃より頭に描いていた桃太郎像とは違うその小さな背中に、心が乱れていた。