「…死んだ…鬼の魂…」

「オレ達は、それを“死鬼”【しき】とよんでいる。
…多分、オマエがこの世界に召喚されたことに気付いて、いつの間にか体に取り憑いたんだろう。
で、結界に足を踏み入れたため暴れ出したって訳だ」


“鬼”という言葉に漠然としていた。

鬼…
そんなものが本当にいるの!?
でもって、私が…桃太郎?

あまりに唐突過ぎて思考がついていかない。


「やっと来たね…」

聞き覚えのある声に顔を上げると、おばあさんが立っていた。
青ざめた顔の私を見ると、おばあさんは察したように目を細め「…奥で話そう」、そう一言だけ告げると奥へと姿を消した。

「…立てるか?」

私は彼の言葉に頷いた。

おばあさんの最初の言葉通り、話を聞かなきゃ何も始まらないと思った。

行くしかない。

決意し立ち上がると、おばあさんの後を追うように歩き出した。