初恋、再び。

後悔はない。
私は信じたい。
この人が 、私を心底愛してくれるだろう。
笑って…私を優しく抱きしめてくれる事を。
彼は私を放し、立ち上がると、私に一言言ってその場をさった。
「舞織が俺を愛しているならば、今日…俺のマンション来て。」
低い低い声で言ったから、聞かなかった事にしても大丈夫だろう。
けれど…そんなコトを考える前に、涙がぽタッと、生クリームの上に落ちた。
彼は…私の心を求めているのだろうか。
けれど…ちゃんと伝えなきゃ。ダメなら…別れればいい。
「はぁ。」涙を拭うと、彼のエプロン握りしめ、走り出した。
「舞織…」
玄関に立っていたのは彼。
「エプロン忘れたよ。」
てでわたすと、彼の腕が何だか香水の匂いがした。
「きてくれて本当にありがとう。けど…今日は…」
彼は私を追い返そうとした。
なぜながら、アレを見せたくないからだろう。
そして…その“アレ”が姿を表した。
「ちょとー。せっかく来たのに…早くっ」
玄関の向こうから、ワンピースを着た女性が出て来た。
私より少し年上の様な黒髪の女性。
真っ赤な口紅でいかにも悪女みたいなつり上がった目。
けれど…大きく開いた目は何だか女性そのものだ。

「だぁれ？もしかして…私を捨てて、浮気？！」
話の内容が読めなくなった。
ショックでショックで。
涙が止まらない。
「なにこの子。」
にらめ付けられると、私も睨み返したく成った。けれど…
彼が大切な女性ににらめ付けたくなかった。
彼を愛していたから…。
愛しているからこそ、幸せに成って欲しい。
「さよなら。幸せになってね」
一言、ただ一言。それを言うだけで辛かった。