「へぇー、これでも?」
そんな夜也に遂に拳銃が向けられた。
その光景を見て反射的に
あたしの体は動いていた。
「やめてください!!打たないで!!」
「ら、な・・・?お前・・・」
あたしは両手を広げて、
夜也の前に立つ。
動けないままなんて嫌だ。
なにもしないなんて惨めだ。
あの日、夜也に心を奪われた日・・・
あたしは
一生奪われていたいと思っただけど
それは違った。
今は、あたしも・・・
夜也の心を奪っていたいと欲張りになった。
「愛だねー?そんなもん良さが俺には
分からないけどね」
「それは、お母さんからもらえなかった
からですか?」
「は?」
「でもそれは違いますよ、もらえなかった
わけじゃない」
「なにを馬鹿馬鹿しい。もらえてたら
困ってない」
明さんのその言葉、
ふと見せた悲しい表情でまだ
お母さんのことが好きなんだって
あたしには分かった。


