あたしはそれを無視するように
無意識に振り返った。


「佐菜、俺に惚れた?」

「あ、き・・・」



明はその言葉を言ったあと、
警察に腕を引かれてパトカーに向かった。


今でも忘れられない。

あの恐ろしいほど自信に満ちた
明の表情が。



この日を境にあたしは一度も明に会って
いないわけで

あたしの中の明の印象はガラっと変わった。


優しい彼が心から消えたわけじゃない
のに・・・。

――――――



「ごめんね、もうそろそろ羅菜は出かけ
ないといけないわね」

「う、うん・・・」



あたしは
長々と明の事件を娘の羅菜に話した。

なに言われるか分かんなかったけど

羅菜は黙って
聞いててくれた。


「でもね・・・お母さん。なんでまた
おじさんが今も怪盗続けてるの?捕まった
んだよね・・・?」

「あぁ、実は・・・明は捕まってなかった
のよ」