私の頬をぬぐい終えると、正和さんはハンカチをしまう。


 正和さんはコホン、と小さく咳払い。




 そして。
 
 今度は左のポケットから手の平にすっぽり収まるほどの小さなケースを取り出した。





 私はただ、彼の動きを見ている。



 彼が私に向けて、ケースを開けた。






 そこにはキラキラと輝くダイヤの付いたリング。







―――指・・・・・・輪?



 さっきまで『彼と別れる事になるかもしれない』と、不安でいっぱいだった私。


 思考が目の前の展開に追いついていかない。






―――この指輪、なんだろう。



 数回まばたきをして、じっと見つめる。