「・・・・・・あっ」


 正和さんが短く声を上げた。

「俺の言い方が紛らわしかったんだね。
 ごめん、ごめん」


 彼はジャケットの右のポケットからハンカチを取り出し、涙に濡れた私の頬を優しく拭いてくれる。



「よそよそしく見えたのは、緊張していたからだよ」

 正和さんが軽く微笑む。 



―――緊張?


 今度は私が不思議そうに彼を見上げる。



「すごく緊張してる。
 もしかしたら、これまでの人生で最大級の緊張かも」



―――最大級の緊張?
 



「なんたって、初めてのことだからね。
 余裕なんか全然なくて、昨夜は寝られなかったし・・・・・・」



―――初めて?



 彼は何を言ってるんだろう。




 私には正和さんの言葉が示すものが理解できない。