俺は幸せを味わいながらも、気持ちは冷静だった。


 さっきの笑顔は、まだ由美奈ちゃん本来のものじゃない。

 彼女の中にあるわだかまりをもっと吐き出させないと。




 額だけをを離し、抱きしめたまま俺は話を続ける。    

「あのさ。
 俺が思うに“付き合う”って、発見と穴埋めの連続だと思うんだ」




「それ、どういうことですか?」
 彼女が首をかしげた。




「お互いの趣味とか、価値観とか、食べ物の好みとか。
 付き合っていくうちに分かってくることがあるよね?」


 由美奈ちゃんがうなずく。


「“ここは似てるな”、“ここは私とは違う”とか。
 “その考え方は納得できない”とか。
 それが発見。
 で、大事なのはその後の穴埋め。
 発見した違いを放っておくんじゃなくてさ。
 2人の違う部分にお互いが歩み寄って、その溝を埋めていくんだ」
 


 俺は軽く息を吸い、この数日考えていた本題の1つ目を話し始めた。