「遠慮するのは相手を思いやることでもあるけどさ。
 本当に相手のことを思ったら、時には遠慮を捨てなきゃいけないんじゃないかな?」

 彼女の頭から肩に手を滑らせ、そっと載せる。



 由美奈ちゃんの心の中には今、色々な思いや言葉が巡っているのだろう。

 どうやって伝えようか、と考え込んでいるような表情をしている。



「もちろん、何でもかんでも言いたい放題じゃなくって、相手のためになることなら言うべきだと思う。
 そして、自分の気持ちを知ってもらいたいなら、なおさら言葉にするべきだと思う」
 
 彼女のまぶたにそっとキスをした。


 くすぐったそうに目を細める由美奈ちゃん。



「大丈夫。
 もう、怒ったりしない。
 この前、一生分怒ったから」



 そう言うと、由美奈ちゃんは静かに苦笑した。