「ふはぁぁ。
 赤川の事、見直したよ」
 俺は改めて、目の前にいる後輩をじっくり見る。


「見直したって・・・・・・。
 今までどんな目で僕を見ていたんですか?」
 すっかりいつもの“後輩”の顔に戻っている。

「そりゃあ。
 能天気で、おちゃらけてて。
 なかなかソースを覚えない物覚えの悪い奴とか」


「ぐっ・・・・・・。
 ソースを覚えられないのは否定できませんけど、能天気はひどくないですか?」
 がくーんと肩を落とす赤川。


「ははっ、いいムードメーカーってことだよ」

「あんまりフォローになってないと思いますぅ」

「深く考えんなって。
 さぁ、帰るぞ」

 落ち込む赤川の肩を軽く叩いて、俺は立ち上がった。






 駐車場に停めてある自分の車に乗り込む。

 赤川の話を聞いて少し気が楽になった。

「自分の気持ちを偽らずに・・・・・・かぁ。
 でも。
 柏木さんのことを好きかって言うと、いまいちピンと来ないんだよなぁ」



 彼女の存在が気になっているものの、果たしてそれが恋愛感感情なのかと聞かれれば、返答に困る。



「こういうことって考えるだけ無駄か」
 
 キーを回して、エンジンをかける。

「赤川も自分の話が当たる保証はないって言ってたからなぁ。
 後から“あの時の話は間違えでした”とか言うことになったりして」



 奴のことなら、そういうことも有り得そうだと苦笑して、俺は車を走らせた。