「私も食べたかったから、いいんです。
 それに私、こう見えても体力あるんですよ。
 スーパーまでの往復なんて楽勝です。」
 にこっと笑って、右手でガッツポーズの柏木さん。

「へぇ、頼もしいな。
 あっさりした味付けの正月料理が続くと、カレーとか味の濃い物が食べたくなるよね」


 煮しめも、餅も、嫌いじゃないけど。

 普段は洋食の多い俺にとって、和食では物足りない。



「そうなんですよねぇ。
“カレーが食べたい”って思ったら、もう食べないと気が済まなくなっちゃって」
 
「ははっ。
 お節や雑煮じゃ、子供は飽きちゃうもんね」
 

「・・・・・・それって、私が子供だって言いたいんですか?」

 下から睨みつけられた。

 くすくすと笑いながら。


「あ、いや。
 柏木さんのことじゃなくって、弟さんのことだよっ!
 ごめん、ごめんね。
 そんなつもりで言った訳じゃないから!!
 ほんと、ごめんっ」
 コメツキバッタのように、ぺこぺこと頭を下げる俺。


「あはは。
 そんな真剣に謝らないでいいです。
 怒ってませんから。
 ・・・・・・あ、私もう行かないと」

 失礼します、と頭を下げて、柏木さんは颯爽と自転車をこいで行った。





「カレーかぁ・・・・・・。
 よし。
 今夜、俺もカレーにしよう」
 再び歩き出した俺。
 

 体の奥がなぜかほっこりと温かく、北風の冷たさが気にならなかった。