「正和さん?」
 不意に抱きしめられた彼女が、俺を見上げる。


「少し、このままでいさせて」


 我ながら往生際が悪いと思いつつ、由美奈ちゃんの温もりを味わった。

 由美奈ちゃんは何も言わずに、されるがままになっている。




 彼女の滑らかの髪をなでながら、俺の腕の中でじっとしている彼女に頬を寄せる。


 ふわりと由美奈ちゃんの香りが鼻腔をくすぐる。
 
 胸に吸い込むと、心が安らぐ。


 一緒にいるだけで、俺は幸せを感じる。



 と、同時にある問題が心をよぎった。



 由美奈ちゃんがさっき言っていた『自分は年下過ぎるから、俺にはふさわしくない』というセリフ。



 俺は年の差について、まったく気にしていないという訳ではないけれど。

 それが恋愛において、障害になるとは思っていない。


 “付き合うことになった今は”という注釈付きだが。