「それにしても随分気を回す子だよなぁ。
 今のご時世、自分が悪くても謝ることすらできない子もいるというのに。
 感心、感心」
 
 洗剤と柔軟剤を入れて、スイッチ・オン。

 水が注がれる音と共に、低い機械音が響き始め、洗濯機が動き出す。



 俺はぐるぐると回る洗濯物を見つめながら考えていた。


―――柏木さんに対して、俺は特別な感情を持っているのだろうか・・・・・・?

 みんなの評判と、昨日の彼女の態度からはとてもいい子であることがよく分かった。
 

 顔立ちも可愛い。

 幼いとは思うけれど、俺の好みの範囲に入る。



 笑顔がいいのも納得済み。


 男女問わず職場の人間に好かれているのも知っている。



 でも。

 それらは恋愛に発展する決定打ではない。



 そもそも、“自分の中でくすぶっているものが恋愛感情なのかどうか”すら分かっていない。



 だけど、あの胸のざわつきは?

 初めて柏木さんを目にした時のあの光は?




「・・・・・・ふぅ、分からないことばかりだ」
 洗濯機にもたれながらずるずると座る込み、ため息を付く。

 背中からガタガタという振動が伝わってくるが、考え事に没頭する俺にはあまり気にならなかった。


「あの光は・・・・・・、目の錯覚とかじゃないよな?」

 光を見たのは一瞬のことではない。

 何度まばたきしても、彼女の周りの光は消えたりはしなかった。


 それ以後は見ることはなかったけど。




 近頃テレビや雑誌でスピリチュアルな世界が流行っているらしく、『やれ、オーラが何だ』とか『それ、前世がどうした』という話をそこかしこで耳にする。


 残念ながら俺にはそういったものを感知する能力はまったくない。

 欲しいとも思わないけど。