だまし討ちみたいなことしちゃったけど。

 それでも嬉しい。









「ね、ね。
 もっと呼んで」
 腕の中に納まる由美奈ちゃんにお願いする。


「名前を呼ばれるだけのことが、こんなに嬉しいことだと思わなかった。
 お願い。
 由美奈ちゃんの声で、俺の名前呼んで」
 じっと彼女を見つめる。



「・・・・・・正和さん」

 蚊の鳴くような小さな、小さな声。



「こら。
 もっと、はっきり聞こえるように」
 しかるように、彼女の瞳を覗き込む。



 すると、きゅっと目を閉じて、大きく言ってくれた。




「・・・・・・正和さん!」



 照れる彼女が可愛い。