自宅マンションに向かって、テクテクと歩き出した俺。


 酒でほてった頬に冷たい風が当たってすっきりする。


 でも。


 宴会の席で感じたざわつきは、まだ胸の奥でくすぶっていて。

 こっちはすっきりしていない。




「まったく、何なんだよ」

 夜風に吹かれて歩いているうち、すっかり酔いは覚めたというのに、頭が働かない。

 いや、あえて考えないようにしている。


―――正体を知るのが怖いから・・・・・・。


「怖い?
 何が?」

 ふと湧き出た疑問がするりと口からこぼれた。

 幸い周りには誰もいなくて、変な目で見られることはなかった。




 俺は一体何におびえているのだろう。

 冬の風は足元に数枚の枯葉を運んでくるが、俺の求める答えは運んでくれそうにない。



「赤川が言ってたことは本当なのかなぁ」

 だけど、言ったそばから俺は自分の言葉を否定する。


 今までになんとなく気になった女性や、実際付き合った女性というのは、俺の歳の前後2、3才って所だ。

 柏木さんは俺の好みからすると、ストライクゾーンを大きくはみ出し、手も出さず見送るボール球。

 それなのに・・・・・・。



「訳分からねぇな。
 冬は人肌恋しい季節だから、なんとなくそんな気分になっているだけなのかもしれないな」



 適当な理由で片付け、マフラーをしっかり巻きなおして家路を急いだ。