「違うんです。
 その場で断わったんですよ!
 だけど、ポケットに無理矢理入れられて」

 そう言われれば、少しシワになったチケット。



「捨てるのも悪いし。
 それでポケットに入れたままに」


「チケットの払い戻しをするとか、他の人が行くとかすればいいんだもんね。
 捨てるのはもったいないよ」

 俺は由美奈ちゃんにチケットを戻す。


「・・・・・・これは、その人に返します。
 そして、もう一度断わります」

 俺から返されたチケットをじっと見据える。


「まぁ、ね。
 変に期待を持たせるよりは、はっきりさせた方が良いかも。
 その男の子がちょっとかわいそうだけど」

 





 今は、由美奈ちゃんに想いを寄せていてもいいんだ。

 

 この恋を終わらせなくてもいいんだ。
 


 俺は少しだけほっとした。