「・・・・・・ああ、そうでしたか」
 俺の返事を聞いて、今更ながらその事実に気が付いたようだ。


―――ま、普通はいちいち人のシフトまで気にしてないよな。

 こういう間の抜けたところが憎めないところである。


 苦笑しながら赤川の横をすり抜け、俺は自分のロッカーに向かう。



 俺としてはこれ以上特に話すことがないのだが、
「ちょっと、三山さん!?」
 と、俺の肩に手をかけ、奴は引き止めてきた。


「なんだよ?」 
 しつこい赤川をにらんでやった。


「気にならないんですか?
 その子のこと」
 それでも懲りた様子もなく、赤川は話を続けてくる。


「別に。
 新人のバイトが入ったって事だけだろ。
 騒ぎ立てるほどのことでもないし」

 芸能人でも来たってんなら、ちょっとは話が変わるだろうけど。


 つれない態度の俺の横で、なおも興奮気味の赤川は言葉を続ける。

「その子を見た男性従業員達は浮き足立ってましたよ。
 可愛らしくって、なんか、『守ってあげたい!』って思わせるんですよ」

「ふぅん」
 そんなに可愛い子なんだ。

 でも、そこまで年下過ぎると何の関心もない。


―――って、お前も昨日休みだったよな?
   なんで新人の顔知ってんだよ。


 ・・・・・・さてはわざわざ見に来たな?

 この、暇人め。




 まぁ、赤川が休みの日に何をしていようと俺には関係ない。

 俺は肩に置かれた奴の手を払って、上着を脱いだ。


「三山さんもその子を見たら、きっと好きになっちゃいますよぉ」
 赤川はニコニコとなんだか嬉しそうだ。


「はははっ。
 ありえないな。
 絶対にない」

 奴があまりに突拍子もないことを言い出すので、思わず笑ってしまった。