「いえ、私が重いからですよね」
 
 由美奈ちゃんに瞳に、ほんのちょっと悲しそうな色が浮かぶ。

「そんなことないよ。
 この位はぜんぜん余裕」

「本当ですか?」

 いまいち信じていない様子の彼女。



 俺は見上げている由美奈ちゃんに微笑みかける。

「毎日、5人分のパスタが入った大きなフライパンを何十回と振ってるんだ。
 俺の腕力、なめんなよ」

 実際、フライパンを振るのは力ではなくてコツなんだけど、由美奈ちゃんは納得したようだ。

「それは頼もしいですね」

 安心したのか、俺の胸にコトンと頭を預ける彼女。



―――俺、頼られてる?!




 だけど。

 じっくり喜びをかみしめる間もなく、病院についてしまった。