「どうせ柏木さんに告白しようか、どうしようかって相談だったんでしょ?」
 くすくすと笑いながら、ごくりとサワーを飲んでいる。


「・・・・・・よく分かったな」
 俺の顔が少しだけ不機嫌になる。


 なんでだろう。

 赤川に言い当てられると、くやしいんだよなぁ。



「ま、そのくらいはね」

 赤川は俺のそんな様子を気に留める事もない。

 運ばれた料理に箸を伸ばす。



「俺の言いたい事が分かっているんなら、話は早いや。
 で、俺は彼女に告白しない方がいいって事か?」

 “焦らなくていい”というのは、そういうことだろう。




「今はそうですねぇ。
 時期が早いです」
 手を口元に当てて、少し考え込んだ赤川はそう言った。

「そうなのか?」
 
「言おうか、どうしようかと迷っていること自体が、今は時期ではないと伝えてくれているようなものです。
 もし、タイミングが巡ってきたら、自然とそういう方向に動いていきます」

 赤川が箸を置き、真剣な顔で俺に向き合う。

 職場で見る奴の顔とは違う、もう一つの顔だ。



 この顔をされると、俺も真剣に奴の話しを聞こうって気になる。



『俺のほうが先輩だ』とか、『お前は後輩のくせに』だとか、そういった立場は関係ない。

 ましてや、この手の話においては赤川の方が先輩だ。




 俺の悩みに真剣に付き合ってくれる、大事な存在。

 こいつの話にはうなずける事がたくさんあるからな。





 くやしいけど。