しかも・・・・・・。

「岩谷君は怪我で入院してるし、橋本さんと佐山さんはインフルエンザで当分は来られないって言うし。
 今回のクリスマスは絶対に手が足りないわ!」
 山岸さんが形よく整えられた爪でカツカツとメモをつつく。


「忙しいのはありがたいけど、この状況ではきついですよね」
 食い入るようにメモを眺めながら、腕を組む俺。
 

 混まないよりは、混んでくれた方が店側としても助かる。


 とはいえ、この予約の入り方は考え物だ。

 まして人手不足となれば、山岸さんの頭は更に痛くなる。



「そうなのよ。
 これだけのお客様をさばくには、ホールの人数が足りないの。
 サービスが行き届かないことだって考えられるわ。
 かと言って今から募集をかけても・・・・・・」
 山岸さんが眉間にしわを寄せて、厳しい表情となった。


「一から教えるには時間的に無理ですよね?」
 後輩の見習いコックである赤川が口を挟む。。


「それどころか誰も面接に来ないかもしれないぞ」
 深刻そうに水田が笑えない冗談を口にする。

 みんなの顔が引きつった。


―――センスのない冗談をこんな時に言うなよ・・・・・・。 






「あぁ~、困ったわぁ」

「どうしたらいいんですかねぇ」

 狭い事務所で大人四人がうんうん唸っていると、ホールバイトの田口さんが通りかかった。

「お疲れ様です。
 ・・・・・・って、皆さんで何を唸っているんですか?」
 すらりと背が高く
、ショートカットのよく似合う少女が中を覗き込む。

「ちょっと困った状況でね。
 クリスマスの予約がいつもより多い上に、人手不足でしょ。
 お客様への対応がおろそかになったら大問題だわ。
 でも、予約をお断りするわけにもいかないし」

 頬に手を当て、ため息をつく山岸さん。