「他の人よりもだいぶ奮発しちゃったけど・・・・・・・。
 ま、いいか」


 家族みんなで見てくれと言って渡せば、そんなに不自然ではあるまい。
 
 良い買い物が出来て、満足顔で駐車場へ。
 


 そこで、ふと気がついた。

「みんなとは違うお返しを、どこでどうやって渡せば良いんだ?!」


 明らかに1人だけ違う品物を職場で渡したら・・・・・・。

 そんなところを誰かに見られたりしたら、俺の気持ちは丸分かりだ。




「まずい。
 絶対にまずいよな」
 

 うっかりしていた。
 
 それなら他の人と同じように、キャンディーとハンカチのセットを渡すべきだろうか。
 


 でも。

 どう考えたって、この写真集のほうが由美奈ちゃんは喜ぶに決まっている。


「困ったなぁ」

 ようやくいいお返しが用意できたと思ったのに、新しい悩みが出来てしまった。







 たいした名案も浮かずに、ホワイトデー当日。

「はぁ、どうしようかなぁ」
 朝食を摂りながら、考えをめぐらせる。


「あれを渡すなら、由美奈ちゃん1人の所を狙わないとだめだよな」
 温かい紅茶を1口飲む。


「電話で呼び出すか?
 でも、変に警戒されたら困るし」
 更に紅茶を1口。



「・・・・・・よし。
 こうなったらしかたがない」


 俺は手に持っていたティーカップをテーブルに置き、立ち上がった。