『その奥さんは、原田実咲-ハラダミサキ-さんですか』



…さっきの電話の……?



『……何で妻を……』



…“妻”……?




『あんたが轢き逃げしたのは、俺の同期。共に轢かれたのは、この俺だ』



『……えっ……』



『兄貴……』



堪えきれなくなって、脚に力を入れる。

そして七星の支えを振り払い、私は涙に濡れた顔のまま取調室に入った。



「愛依……」



「姉貴――!?」



「何で……?何でや……っ!何で、悠呀を殺したん!!何で斗志樹が苦しまなあかんねん!!」



「愛依、止めろ!」



「姉貴、落ち着けよ!!;;」



「斗志樹の気持ち考えたんか?斗志樹がどんな思いで生きて来たんかわかるんか……っ……!!」



「もう、止めろ!」



「……くぅ……っ゛……」



斗志樹に後ろから抱き締められ、無意識に掴んでた男の胸倉から手を離した。

歯を食い縛っても漏れる嗚咽。

斗志樹の腕を掴みながら、悔しさ、苦しさを机にぶつけるように蹴飛ばす。



「すみませんでした……っ!!」



頭を下げられても、時計の針は戻らない。

戻しては斗志樹と結ばれる運命ではない。

どうして運命はこんなにも複雑なのか。

私が、誰が、悪いのか――…。



「愛依……?愛依!!」



「―――……」



きっと誰も悪くはないのに。

自分を責めるしかなかった。