しかし、考え込んでても仕方ない。

深呼吸をし、気持ちを入れ替える。

無線の対応をしてくれてた磯村さんと交代し、斗真から状況説明を受ける。

未だに見付からない犯人。

私は無線機を持ったまま、無線機下のロッカーから分厚いファイルの1冊を取り出した。

この一連の放火事件の報告書や写真が納まってるもの。

消火中と鎮火後の写真をボーッと見つめる。

犯人の特徴は全身黒づくめ。

しかし、そんな人物は写り込んでない。

だけど、放火犯は現場に戻る習性がある。



「――居たっ!!」



けど、火災現場が密集してるわけじゃないのに、どの写真にも同じ男が映り込んでた。

私は「課長!!」と叫びながら、臼杵と磯村さんたちを連れて課を出る。

現場で騒がぬよう、斗真には連絡を入れず、現場に急行するみんなにだけ犯人と思しき人物について教えた。

2台に別れて現場へ行き、監査役の存在を無視して斗真と七星に写真を見せて、全員で野次馬の中から男を探す。

そして、真っ先に見付けたらしい斗志樹から無線で指示が出された。

全方位を取り囲むように、全員でジリジリと迫って行く。



「ちょっと、よろしいですか」



「何ですか?」



「向こうで話しましょうか」



斗志樹が警察手帳を見せながら声を掛けるも、慌てた様子はない。

私の勘は外れたのか。